聞き上手な女性の相槌の打ち方と目線のコツ

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初めて彼女を見たのは、僕が入院している友達の見舞いにいったときのことでした。

手術の経過もよく、元気な友達の顔を見てほっとしていると、隣りのベッドの入院患者にやはり見舞いにおとずれた女性がいました。

どうやら患者の姉のようで、患者の若い男性がお姉さんとよんでいたのをみてもそれは蕗らかでした。

隣同士ということもあって、僕は彼女と挨拶を交わしました。

笑顔のきれいな、感じのいい女性です。

弟の回復も順調で、姉妹の会話は笑いもまじって楽しいものでした。

僕が友達に別れをつげて廊下に出ると、うしろから彼女もでできてエレベーターの前でいっしょになりました。

「弟、騒がしくて迷惑をかけていませんか」
「そんなことないようですよ。

友達とよく話してをしているそうです」
「よかった。

寂しい思いをしてないかと、心配してましたの」
「弟さん思いなんですね」
「そんなことないです」
話がはずんだときにエレベーターの扉が開きました。

僕はまだ話したりない気持ちでした。

このまま彼女と別れたら、もう会う機会はないかもしれません。

友達も弟も、近日中に退院の予定です。

「お急ぎですか」
僕はたずねました。

「いえ、これからどうしようかと思っています」
「よかったら、少しお話でも」
「いいですわね。

そこのロビーに座りましょうか。

二人は眼の前で開いた扉が再び閉じるのを見届けてから、通路の端のロビーに向いました。

話が合うのが何よりでした。

彼女は聞き上手で、自分はあまりでしゃばらずに、こちらの話にじっと耳をすませています。

ときおり相槌をうち、興味ありげな目で僕を見返します。

僕はソファに彼女とむかいあいながら、みたされた気分でいました。

このソファを立つときまでに、今度会うときの約束を何とか交わしておこうと思い、しかしそうなると口はこわばって、これまでのようにすらすらと言葉がでてきません。

こちらを見つめる彼女の方も、何かをまちわびている様子です。

僕は決心しました。

「あのう、よかったら………」
そこまでいったとき、
「姉さん、まだいたのか」
とパジャマ姿の弟が通路から現れました。

「今この方と大切な話をしているのだから、邪魔しないでちょうだい」
弟を叱りつけて彼女は、再び僕の話に耳を傾けました。

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