突然夜中に、僕の部屋のドアをノックするものがありました。その小刻みに打ち鳴らすやり方に心当たりがありました。しかし彼女とは半年前に別れたはず………。僕は首をひねりながら、とにかく玄関に向かいました。

「やっぱり、きみか。いまじぶんどうしたんだ」
「ごめんなさい。入ってもいいかしら」
「うーん。僕たちは別れたはずだよ」

難色を示す僕をみて彼女は、目に見えてしょげかえりました。
時刻はすでに1時を回っています。このまま暗い夜道を帰らすのもどうかと思って僕は、とにかく彼女を部屋にあげました。
室内は、半年前彼女が足しげく訪れていたときのまま何も変わっていません。当時のことを思いだすのか彼女が、部屋の中をひとしきりみまわしました。ここに布団を敷いて二人は寝ていたのです。しかしそれはもう、過去の出来事です。

「ほんとうに、どうしたんだ」

みると彼女の頬には涙の後が残っていました。

「今まで公園で、ずっと泣きつづけていたの」
少なくともその原因が僕でないことだけは確かです。あの日別れた時でさえ、彼女は涙ひとつみせなかったのですから。会社をリストラされ、どん底に落ちていた僕から彼女は立ち去っていったのでした。

「失恋でもしたのか」
彼女は黙ってうなずきました。

「なら僕にあうのは、おかどちがいというものだろう」

つい強い口調になってしまいました。

「ほかにいくとこがなかったの、お願い、抱いて」
「なにをいいだすんだ。やっときみのことが忘れられかけたというのに」

彼女は急に立ち上がると、猛然と僕に向って体を投げかけてきました。しばらくどたとだやったあげく、僕は彼女を抱きしめました。半年が立つと言うのに、僕の中にはまだ彼女への愛着が色濃く残っていたことがわかりました。手が自然に動いて、彼女は夢中になって僕にしがみつき、なにかをけん命に振り払おうとして躍起になっていました。そして興奮の極みに達すると、大声をだして泣きはじめました。それが僕にむかって泣いているのではないのがわかっているだけに、僕は変に冷めた気分でした。
彼女は朝方、明るくなってから部屋を出て行きました。
気持の整理に僕は役に立ったのか、それさえ答えることなく帰って行きました。過ぎ去ったものに心を許した僕がまちがっていたのです。この朝ほど心が虚しく感じられたことはありませんでした。

結局、その日も彼女とセックスすることはなかった。半年以上交際していてもそういった関係になることはなく、プラトニックなままだった。
彼女は処女なのだろうか。聞いたことがないからわからないのだが、僕は童貞のままだ。

童貞卒業できずにもうすぐ30歳になりそうだ。このままでいいのだろうか。僕は天使か魔法使いになってしまうのだろうか。
一時期、童貞のままでもいいかなと諦めかけたこともあった。1人のほうがいいじゃないかと。

でもそれではいけないことを悟った。やはり、女性と肉体経験を経てこそ、女性と理解し合えることもあるのだろう。

童貞卒業するには出合い系というサイトを最近はスマホから一日中見ている。このサイトの通り、出合い系や出合いアプリで手っ取り早く相手をみつけたほうがいいのだろうか。
僕は決してモテないわけではないし、彼女だっていたことがある。

なのだけど、女性とHすることが怖いのだ。なんだか恐怖や恐れを感じてしまう。こういう悩みは一度セックスしてしまえば吹き飛ぶのかもしれない。
でも僕には重大な問題であり、越えがたい壁なのである。